コラム

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顧客体験向上  Unboxing設計の概要とポイントを紹介

2022年4月26日

皆様はUnboxingを知っていますか?きっと読者のほとんどの方が使用する日本語にすると「箱の開封」、もしくは一度はYouTubeなどの動画サイトやSNSで見たことがあるであろう「開封動画」です。消費者側としてECサイトなどで注文した商品の「箱の開封」を行ったり、YouTubeで「開封動画」を見たことはあるけれど、マーケティングの実行者側としてUnboxingをよく知らない触れた事がない、これからUnboxingを行ったみたいという方にむけて今回はUnboxingとは何か、どんなメリットがあるのか、そして最後に事例をお伝えしていきます。

Unboxing(アンボクシング)とは?

ユーザが購入した製品を箱から取り出す一連の行為や経験のこと

Unboxingとはユーザが購入した製品を取り出す一連の行動や経験、それらの過程を撮影しSNSや動画サイトに投稿することです。

例えば送られてきたパッケージを眺める、パッケージから商品を取り出す等がUnboxingになります。

なぜこの一連の行動がマーケティング施策の一つとして近年重要なのでしょうか?疑問に思った方もいるかもしれません。ただ箱を開けているだけではないか、と。

もしそうだとしたら思い出してみてください子供時代を。いろいろなイベントがあったと思いますが今回重要なイベントはクリスマスです、もしくは誕生日。

この二つのイベントの共通点はなんでしょうか。いくつかあると思いますが、多くの人が思い浮かべたと思います、そうプレゼントを貰えることです。

プレゼントをもらって開封するときどんな気持ちでしたか?きっとワクワクしていたでしょうし箱の中身への期待感があったかと思います。このワクワクや期待感こそがUnboxingがマーケティングにおいて重要視されている理由になります。

今回の記事ではUnboxingの具体的な設計手法ではなく、素晴らしいUnboxing設計をした場合、ユーザが一連の行動や経験を経ることで製品やブランドにどんな感情を持ち、どのような影響がでるのかをお話していきます。

パッケージはコトラーが指摘した製品の3層モデルにおける形態の部分に当たる

そもそも読者の皆様は、Unboxingにおいてユーザとの初めての接点になる、パッケージに対してどのようなイメージを持っていますか。

もしかしたら重要なのはパッケージの中に入っている製品自体であり、開封後は基本的に捨てられるパッケージはあまり重要ではないと思っている方もいるかもしれません。

そのような方はきっと投資するのはパッケージの中にある製品自体であり、重要だと思わないパッケージに投資をすることは意味のないことと考えているでしょう。

もしくはパッケージは物流コストで、いかに減らすかが重要だと考えているかもしれません。たしかに製品に投資することは重要ですし、不要なコストの削減も当然に重要です。

しかし、決してパッケージは製品より優先順位の低い、ないがしろにして良い物ではないのです。STP理論などで有名なアメリカの学者であり、近代マーケティングの父、マーケティングの神様とも呼ばれているフィリップ・コトラーの提唱したプロダクト3層モデルではパッケージを、第二層目である、製品の形態としてブランドやデザイン、品質水準や特徴と同じ層として扱っています。

きっと上記のような方々もブランドやデザイン、品質水準や特徴には投資をしてきた、もしくはするべきだと考えるでしょう。しかし、そうは言ってもいきなりパッケージをそれらと同様に扱い投資をするという判断は難しいと考えるかもしれません。

けれどこのような考えの方も以下のメリットや事例を読めば考えが変わるかもしれません。

Uunboxing設計の狙いとメリット

ブランドのストーリーやコンセプト、ESG・SDGsへの取り組みを伝えることができる

Unboxingのメリットの一つとしてブランドや商品のストーリーやコンセプト、取り組みを伝えることができる点があります。

Unboxingの中に組み込むストーリーとしては、例えばこんなものがあります。

ブランドにどのような歴史があるのか

同じ業界の他ブランドとの差別点、など。

これらのコンセプトやストーリーを使用して箱を開けるときのワクワクや期待感を演出するのです。

また最近ではSDGsへの取り組みをUnboxingで表現しているブランドも出てきました。

パッケージを再生利用可能な資源から作成したり、開封後パッケージ自体が置物になる仕掛けを施す、はたまた製品の収納ボックスになるなど様々な工夫があります。

ESG、SDGsは世界的な一つの潮流であり企業のホームページなどにSDGsに対する取り組みを表記している企業もあるかと思いますが、Unboxingを使えばユーザに対して直接自社の取り組みを伝えることができます。

顧客ロイヤリティの向上

現代のマーケティングにおいて顧客ロイヤリティは重要なものになっています。

それは何故でしょうか。たとえ取り扱っている商品がどれほど良いものでも、ただ性能が良いというだけでは今の顧客がずっと自社の商品を購入してくれるとは限りませんし、新規顧客の獲得は一般に既存顧客の引き留めよりもずっとコストがかかるとされています。

競争が激化している現代の市場ではすぐに同じような性能を持つ商品や、もしくはもっと性能の良い商品が登場してくるからです。

そこで重要になってくるのが顧客ロイヤリティであり、顧客ロイヤリティの向上に役立つ一つの施策が今回の記事で紹介しているUnboxingになります。

Unboxingのメリットの一つ目として挙げているブランドのストーリーやコンセプトを使用してユーザにワクワクや期待感を届ける、ESG・SDGsへの取り組みを伝えることで共感を得る、これらの知見や体験、共感を経ることでユーザにもう一度この体験をしたい、と思わせることで競合ブランド・サービスへのスイッチを防ぎ、購買の継続させるのです。

ユーザやインフルエンサーによって拡散される

上記二つのメリットはあくまで購入したユーザだけに対するメリットでした。これだけのメリットでは投資する価値は無い、と思う方もいるかもしれません。

けれどUnboxingのメリットはそれだけではありません。素晴らしいUnboxingは優秀な広告でありレビューになるのです。Googleの動画検索でUnboxingと検索してみてください。

7860万個もの動画が検索結果に表示され、YouTubeに投稿されている動画の中には3000万回を超える再生数の動画もあります。つまりユーザのなかにはUnboxinの体験をシェアする人達もいるのです。

これらの動画はブランドが広告費をかけて制作したものではありません。

けれどこれらは拡散し広告のようにブランドを宣伝します。さらにはレビューとしての一面もあり、顧客に作為的でない生の声を届けるため顧客の安心感にもつながります。

Uunboxing設計の成功事例

Apple

皆様はAppleの商品を持っていますか?iPhoneやiPad、Macやairpods等様々な商品を展開しているアメリカのIT企業です。

iPhoneを思い浮かべてみてください、もしくは今このサイトを閲覧しているiPhoneを見ていただいても構いません。どうでしょうか。シンプルでありながら高級感があり、一目見ただけでデザインの素晴らしさがわかると思います。

これはappleが製品のデザインに力を入れている証拠です。けれどappleが力を入れているのは製品だけでしょうか。それは違います。今度はパッケージを思い出してみてください、製品と似たシンプルで高級感のあるデザインだと思います。

CNETが2016年に掲載した”Steve Jobs remembered:Apple co-founder,typeface fanatic”に、1984年にApple製品のパッケージデザインを作成する際のスティーブ・ジョブズの言葉が載っています。

当時スティーブ・ジョブズを含めた開発チームは二つのパッケージで悩んでいました。一つは費用対効果の高いパッケージ、もう一つは少なくとも3倍のコストがかかるパッケージ。

この時彼以外のメンバーは費用対効果の高いパッケージが採用されるだろうと考えていたようです、このコストを支払う予算は無いと。しかし、選ばれたのは後者でした。

このとき彼はメンバーに対してこう述べました「広告費から予算を取るんだ。パッケージは広告のような物だ、人々が箱を持ち歩き車に載せれば、それはAppleの動く広告等になる」、と。それから40年弱経過した現在、彼の言葉通りAppleのパッケージは広告になりました。

正確に言えばパッケージが広告になっているのは車の中ではなく画面の中ですが。Googleで「Apple Unboxing」と検索すると37,300,000もの検索結果が存在し、YoutubeのApple Unboxing動画は無数にあり、最高で1700万回以上も再生されています。

これらの動画はAppleにとって広告になり、レビューにもなります。これだけの人々に広告やレビューを届けようとした場合、いったいどれほどの広告費がかかるでしょうか、想像もつきません。けれどAppleはパッケージのデザインを洗練することで広告費をかけずにこれらを成し遂げたのです。

snaq.me

おやつは好きですか?次に紹介するブランドはsnaq.meです。

snaq.meは食品添加物やショートニングなどを使用していないナチュラル素材のおやつブランドです。

まずはsnaq.meのサービスのご紹介です。snaq.meはおやつの定期便を行っているのですが、おやつ診断というサービスがあります。

初回は診断結果を元に毎月変わる100種類以上のおやつの中から8つのおやつが届きます。そして二回目以降は届いたおやつの評価や食べたいおやつのリクエストをすることで、回を重ねるごとに自分にあったおやつが届くようになるのです。もしかするとこのサービスとUnboxingに何の関係があるのか、と思われた方もいるかもしれません。

けれど思い出してみてください、Unboxingの重要な要素は何でしたか?そうですね、子供の頃に貰ったプレゼントを開けるときのワクワクや期待感です。snaq.meのサービスは見事に合致しているのです。

初回のお届けの時は、きっとどんな商品でも同じだと思いますが、ワクワクしていることでしょう。けれどそのワクワクは二回目以降も続くのです。

おやつの評価やリクエストをすることでどんどん自分好みのお菓子が届くようになり、さらには毎月届くボックスのデザインが変わるのです。さらには3PMmm…という小冊子を同梱しており、この冊子も次に届くボックスへの期待感を高めます。

これらの体験を経ることでユーザは他ブランドへのスイッチを控え長期的な顧客になっていく、つまり顧客ロイヤリティが向上していくのです。

まとめ

今回はUnboxingについての紹介でした。

Unboxingの設計にはいろいろな手法があると思います。けれど重要な要素はユーザにワクワクと期待感を与えること、共感してもらうことです。これらの体験を意識したUnboxingを設計することで顧客ロイヤリティの向上、ひいては売上の向上につながっていきます。

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