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コンサルタントが知っておくべき分析・戦略フレームワーク10選

2022年4月28日

[参考]

デジタルマーケティング系のコンサルタントであってもクライアントの問題解決にあたってより事業全体を俯瞰して問題を捉えたり、経営目線でクライアントへより高次元な提案をしたり意見を述べる機会もあるかと思います。
そこで今回はコンサルタント職であれば、その専門領域に関わらず知っておくべき戦略フレームワークをまとめました。

-目次-

3C

マッキンゼーの元日本支社長の大前研一氏が提唱したフレームワークで、Customer(市場・顧客)、Company(自社)、Competitor(競合)という3つの「C」について分析,情報整理をすることで、事業全体の戦略を考える際に役立てるフレームワークです。

3C分析の目的は、競合に対して強み,弱みを整理し、KSF(Key Success Factor:成功要因)を発見することです。
3C分析における3Cは分析の観点を示すものであるため、実際にKSFの発見に繋がる意味あるものになるかどうかは、その分析の網羅性と深さが重要になります。
そこで、実際に3C分析を進める際は、3つのCの視点から、さらにマクロ分析とミクロ分析の2つの視点で分析を行い、網羅性と深さを担保します。
マクロ分析とミクロ分析では、後述のフレームワーク、「PEST」と「5フォース分析」を用いることが多いです。

STP

STPとは、セグメンテーション(市場細分化)、ターゲティング(狙う市場の選定)、ポジショニング(自社の立ち位置の明確化)の3つの英語表記の頭文字をとったもので、経営・マーケティング学者のフィリップ・コトラーが提唱した戦略フレームワークです。
自社のマーケティング戦略を決めるために活用します。

セグメンテーションでは、参入する市場を細分化し、決定しますが、その前にそもそも顧客像はどのようなものであるのかをペルソナなどの別のフレームワークを用いて決めておく必要があります。

その顧客像を市場にあてはめた場合に、市場を意味ある集団に分割するとすればどのような集団になるか、具体的にはデモグラフィック(人口統計学的属性)、ジオグラフィック(地理学的属性)、サイコグラフィック(心理学的属性)、ビヘイビアル(行動変数)の4つの観点から、市場を分割する工程がこのセグメンテーションになります。

ターゲティングでは、セグメンテーションで細分化した市場のなかで、どの市場を狙うのかを選定する工程です。前述の4つの観点から自社が狙う集団を選定していきます。

ポジショニングでは、セグメンテーションで定めた狙う集団の中で、その集団に自社の製品・サービスが選ばれるために強みとするところ、反対に捨てるところはどこかを明確にします。
具体的には価格軸、購入場所、好み、プロ向け一般向けなど、2つ以上の意味のある軸を定め、その軸における競合との立ち位置をマッピングします。

4P

4P分析は、1960年にマーケティング学者のエドモンド・ジェローム・マッカーシーが提唱した、古典的なマーケティングフレームワークです。
自社のマーケティング活動を、Product(製品・サービス)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販売促進)の視点から、自社のマーケティング戦略の具体化,マーケティング施策の立案に用います。
具体的には以下の項目について、自社のマーケティング活動を整理します。

  • Product:どのような製品・サービスを提供するのか
  • Price:製品・サービスの価格はいくらか
  • Place:製品・サービスを提供するチャネルは何か
  • Promotion:製品・サービスの販促活動はどのようなものか

戦術の3C分析で事業の方向性を整理し、STP分析で戦略を立案し、4P分析で戦略の具体化とマーケティング施策の立案を行うという流れで4P分析を使用することが多いです。

SWOT

SWOT分析とは、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つの要素の頭文字から名付けられており、内部環境と外部環境それぞれに対してこれら4つの視点から分析することにより事業環境を整理するための分析フレームワークです。

SWOT分析のゴールは、クリアすべき事業課題や取り組むべき重点テーマを明確化することにあります。

内部環境と外部環境

内部環境とは自社の経営資源(ヒト,モノ,カネ,情報)や、ビジネスプロセス(バリューチェーン)、業績、4P(マーケティング戦略)に代表される、自社でコントロールが可能な事柄の状態を指します。

一方外部環境は、さらにマクロ環境とミクロ環境に分かれ、政治,法律,経済状況,人口動態,社会の動向,テクノロジーの動向,など自社を取り巻く、自社ではコントロールが不可能な事柄の状態を指します。

Strength(強み)とWeakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)

それぞれ内部環境に対してか外部環境に対してか、その対象によって呼び方はことなっていますが、Strength(強み)とOpportunity(機会)がプラス要因、Weakness(弱み)とThreat(脅威)がマイナス要因を指します。

マトリクス上でクロスさせて考える

SWOTは図のようにマトリクスの各要素について考え、全体を俯瞰することでクリアすべき事業課題や取り組むべき重点テーマを明確にすることができます。

強み ✕ 機会

 ・強みを活かして、機会を攻略する方法を記載する

弱み ✕ 機会

 ・弱みを補い、機会を攻略する方法を記載する

強み ✕ 脅威

 ・強みを活かして、脅威に対抗する方法を記載する

弱み ✕ 脅威

 ・弱みを補い、機会を攻略する方法を考える

このように、多面的な視点から見ることができる点がSWOT分析の価値です。

PEST

PEST分析は、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の4つの頭文字をとった、マクロ環境分析を行う際に用いるフレームワークです。
PEST分析のゴールは、マクロ環境を定めるために、網羅的な視点から環境を分析することです。
PEST分析は、例えばITや半導体など技術の動向ばかりに目がいってしまうことを防ぎ、政治的要因や経済的要因、社会的要因など多面的な視点で分析するきっかけを与えてくれます。
よくPEST分析が利用されるシーンとしては、事業戦略の立案を行う際、事業課題を洗い出す際、新規事業を立案する際に、外部環境分析におけるマクロ環境分析を行うシーンです。

アンゾフ・マトリクス

アンゾフ・マトリクスとは、経営学者のH.I.アンゾフが提唱した、縦軸に市場、横軸に製品を取り、それぞれ既存と新規の軸を追加したマトリクスのことです。
自社の事業成長を考える際に用いるフレームワークで、フレームワークを用いるゴールは自社の事業成長において4象限のどれに注力をするべきか、判断材料を見出すことです。

市場浸透戦略(既存市場 ✕ 既存製品)

既存のビジネスをそのままスケールさせるための戦略です。
顧客数や受注率、顧客1人あたり購買金額や、顧客生涯価値など、売上や利益を伸ばすための因数になる要素に貢献する施策を考えます。

新商品開発戦略(既存市場 ✕ 新規製品)

既存市場に新しい製品を投入する戦略です。
代表的なケースでは、すでに存在する顧客へ、アップセルを狙い既存製品の周辺製品を開発・提案します。
他にも、既存製品のバージョンアップや、場合によっては既存製品を代替するような目新しい製品を開発・提案することもあります。
市場浸透戦略で伸び悩んだり、事業戦略における順当な攻めの一手を打ちたい場合によく用いられる戦略です。

新市場開拓戦略(新市場 ✕ 既存製品)

既存製品をこれまで開拓してこなかった新しい市場に投入する戦略です。
例えば、海外向けを国内向け製品として投入したり、一般向け製品を企業向けに販売するといったターゲット変更が代表的です。
これまでその新たな市場に製品を投下しなかった何かしらの理由は存在するはずなので、外部環境や内部環境の変化をきっかけにこの戦略を取るケースが一般的です。

多角化戦略(新市場 ✕ 既存製品)

新しい市場に新しい商品を開発・提案する戦略です。
既存顧客がいたり、販売実績があるわけではないため、非常にリスクの高い戦略になります。
ただ、リスク許容度の範囲内で、攻めの一手として大きく事業転換を進めたいケースや、コロナウィルスで既存事業が成り立たないなど、急激な外部環境の変化により事業転換を求められるケースでこの戦略を取る場合があります。

ファイブフォース

ファイブフォースとは1979年に経営学者マイケル・ポーターが提唱した、外部環境分析における企業の競争要因を整理するフレームワークです。
企業の競争要因とは以下の5つを指します。

  • 新規参入者の存在
  • 代替品の存在
  • 買い手の交渉力
  • 供給業者の交渉力
  • 既存プレイヤー内の競争

新規参入者の存在

新規の参入障壁がどれぐらいあるのかを分析します。
観点としては、コストに見合う生産設備の規模、ブランド・知名度の高さ、資金力、スイッチングコスト、流通チャネルの独占性と、それぞれの視点から検討します。

代替品の存在

他社の製品により、市場における自社の製品シェアが奪われる可能性について検討します。
PEST分析など異なる外部環境分析のフレームワークを併せて用いることでより網羅的に可能性を検討できます。

買い手の交渉力

市場における特定企業の独占度、製品の差別化、スイッチングコスト、買い手と売り手の情報格差、市場の寡占化などの観点から、販売先の交渉力について検討します。
販売先の交渉力が高まる一方の場合は、利益率が圧迫される傾向となる可能性が高く、大きな脅威となります。

供給業者の交渉力

市場における特定企業の独占度、製品の差別化、スイッチングコスト、買い手と売り手の情報格差、市場の寡占化などの観点から、仕入先の交渉力について検討します。
調達する原材料のシェアの大半を特定の仕入先が押さえている場合、交渉力の差から仕入れコストが高くなることを許容せざるを得ないといった脅威が考えられます。

既存プレイヤー内の競争

最も一般的な分析の観点が共同他社の脅威の検討です。
市場シェア、ブランド力、販売力、売上規模、生産規模、価格などの観点から、競合企業の脅威について検討します。

アドバンテージ・マトリクス

ボストンコンサルティンググループが提唱した、競争環境を分析するためのフレームワークです。

縦軸に競争要因の数を、横軸に競争優位性を構築する可能性の大きさを取り、事業モデルを「分散型事業」「特化型事業」「手詰まり型事業」「規模型事業」の4つのタイプに分類しています。

フレームワークのゴールとしては、分析対象の企業がどのタイプに当てはまるか位置づけを行うことで、その企業が取るべき事業戦略の方向性を見出す示唆を得ることです。

バリューチェーン

経営学者マイケル・ポーターが提唱した、内部分析における分析フレームワークの1つです。

ビジネスにおけるバリュー(付加価値)を主活動と支援活動の2つのカテゴリから、それぞれ各工程に分解し、その工程の中でどの部分の付加価値が高く、どの部分の付加価値が低いのかを検討することで、自社の強み弱みの発見や、問題の発見に活かします。

分析結果の基本的な用途は、付加価値の大きい工程は維持または強化し、付加価値の低い工程は省くまたは効率化を検討します。

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)

ボストンコンサルティンググループが提唱した、内部環境分析におけるフレームワークの1つで、最適な経営資源の配分方法を見出すために用いられます。
縦軸に市場成長率、横軸に市場占有率を取るマトリクス構造になっており、製品・サービスを、花形、金のなる木、問題児、負け犬の4つに分類します。

花形

市場成長率が高く、市場シェアも大きい製品・サービスがこの領域に当てはまります。
現在成長期の製品・サービスで、一般的には販促に投じる費用も大きく、積極的な投資対象です。

金のなる木

市場成長率は低いが、市場シェアは大きい製品・サービスがこの領域に当てはまります。
市場成長率が低いところがポイントで、市場は頭打ちになっている可能性が高く、この領域の製品・サービスは中長期な成長は見込みにくいです。
そのため、積極的な投資は行わないケースが多く、この金のなる木で得た収益を中長期的に高い成長を見込める他製品・サービスに投下していくための収益源としての位置づけになります。

問題児

市場成長率は高いが、市場シェアは小さい製品・サービスがこの領域に当てはまります。
市場成長率が高いところがポイントで、市場シェアを引き上げることができれば花形製品・サービスに昇華させることができます。
そのため、積極的な投資が求められます。

負け犬

市場成長率が低く、市場シェアも小さい製品・サービスがこの領域に当てはまります。
衰退期に入っている製品・サービスである場合が多いです。
積極的な投資をする魅力にかけるため、この領域の製品・サービスは撤退するか、もしくは他の製品・サービスにその分のリソースを割く方が賢明な判断となります。

以上、コンサルタントが知っておくべき分析・戦略フレームワーク10選でした。
この他にも数十のフレームワークが存在しますが、まずは主要なフレームワークから実際に活用し、自分なりのアウトプットを行うことをおすすめします。

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